

沖縄の人は豚肉が大好きだ。肉の部分に限らず、胃腸だろうが、皮だろうが、血液だろうが、足だろうが、豚のあらゆる部位を料理に使う。「沖縄では豚は鳴き声以外捨てるところがない」といわれるほど、きれいに食べ尽くすのだ。この豚好きは、沖縄の正月料理の習慣からきている。かつて、沖縄の農家には、かならず豚小屋があって、年に一度、正月の三日か四日ほど前に、豚一頭をほふって、正月料理をつくった。裕福な農家では一家に一頭、貧しい農家では、二軒か三軒で一頭ほふって、首肉の部分でつくる豚汁に始まり、正月のあいだ豚料理を食べつづける。ふだん粗食で、慢性的に脂肪と動物性タンパク質が不足していた昔の沖縄の人々にとって、正月の豚料理は、それらの栄養をまとめてとる年に一度の機会だったのだ。そんな特別な機会だからこそ、豚のあらゆる部位をむだにせず、料理に使ったのだろう。しかも、今でこそ、「鳴き声以外捨てるところがない」といわれているが、昔は、鳴き声さえ捨てなかった。豚の血をとるときに鳴き叫ぶ豚の声は、かつては沖縄の豚料理のオードブル。その鳴き声に、沖縄の人々は、大いに食欲をそそられたのだという。沖縄旅行の際には、豚料理を楽しんでもらいたい。
火山国である日本は、世界に冠たる温泉大国でもある。昔から日本人は温泉に親しんできた。それは現在でも変わらない。むしろ、ストレス社会を反映してか温泉への関心はより高まっているようだ。その証拠に、テレビなどマスメディアでも「地図に載っていない一軒宿」「日帰り温泉の旅」「秘湯の旅○○○」「美人女将のいる温泉旅館」……といったような温泉番組が頻繁に放送され、書店には全国各地の温泉や秘湯、露天風呂を紹介した情報誌が所せましと並べられている。国内旅行より海外へ行くほうがスマートだと思っていた若者たちの間にも、このところ温泉のよさを見直す傾向が見られるようである。とくに若い女性の間に、温泉ブームが広がっている。例えば、ひなびた風信を残していることで、注目を集めている熊本県の「黒川温泉」。宿泊施設はわずか二〇数軒という小さな温泉地で、熊本市の中心街から片道三時間以上もかかる不便な温泉場だが、実際に訪れてみると、二〇力所もある露天風呂巡りを楽しむ女性たちの多さにびっくりする。もちろん若いカップルも多い。パチンコなどの娯楽施設がいっさいなく、若い女性たちが安心して温泉街を歩くことができるのも人気の秘密だろう。同じく、秘湯として根強い人気がある秋田県田沢湖高原の「乳頭温泉郷」。東京からだと、電車とバスを乗り継いでゆうに半日はかかる、けっしてアクセスのいい温泉とはいえないが、そんな時間を費やしてまで人々を誘う雰囲気が乳頭温泉郷にはある。これらはほんの一例だが、ストレス社会で疲れた心と体を癒すため、多くの現代人が温泉に大きな関心を寄せているのは間違いない。増え続ける「天然温泉」では、いったい私たちはどのぐらいの頻度で温泉に出かけているのだろうか。最近は夕日ヶ浦温泉が温泉マニアの中で人気だ。